

2006.7.11
![]() |
沼口 雄治 医師聖路加国際病院 放射線科特別顧問日本脳神経血管内治療学会指導医 ロチェスター大学放射線科教授 |
日本の放射線診療で良い点を挙げるとすると、検査へのアクセスがいいことでしょう。CTやMRIの国民一人あたりの台数は世界一多い。それに医療費の国家予算はGNPの7.5%と米国の15%の半分です。そこまではいいのですが、日本では甘い適応で検査が受けられ、短期間にいろいろな病院で繰り返し画像検査がなされても個人負担は3割で済んでしまう。これはつまり医療費を有効活用していないということです。それに比べると、米国では保険会社が保険の適応を厳しく監視しています。無駄なあるいは甘い適応の検査には保険金は支払われません。
また日本では画像診断装置の台数は多いのですが、米国と比較して1.5テスラ以下のMRIやシングルスライスCTなどローエンド装置の割合が多いのも特徴です。
日本では大学6年間の教育の後2年間のスーパーローテート修練と数年の専門分野の修練があります。専門医になるための認定医制度はあるのですが、少なくとも放射線科においては試験が甘く、また十分な卒後教育ができる施設が少ないことも問題です。
米国では大学4年、医学部4年、インターン、レジデント、フェローシップなど、教育だけで十数年かかります。レジデント研修を済ませ、放射線専門医になった後も小児放射線学、核医学、神経放射線学、血管内治療(IVR)などそれぞれの分野において10年に1回認定試験があるなど、医師のクオリティコントロールが徹底されています。
日本と違い、専門や能力によって給料が何千万円もの差がでることからも、医師にとって卒後教育は重要です。また画像診断において、日本では内科医や外科医などが診断をつけることがありますが、米国では放射線科専門医が診断をつける必要があり、診断能力を問われます。
![]() |
| 脊椎圧迫骨折における骨セメントを使った経皮的椎体形成術の施行は、2006年に高度先進医療に承認されている。 |
米国では放射線科医の地位は高いのですが、日本では決して高くありません。しかし私は日本の放射線科は、これからバラ色だと考えています。現在の旧態依然とした大学病院のシステムは必ずやくずれてきます。病院が医師をスカウトする時代になり、一般病院に優秀な医師が流れてくるでしょう。そして、地方の医師不足を補うため、また地域の病院が効率的に診断や読影を行えるよう、これからは遠隔診断の重要性がますます高まってきます。
遠隔診断のインフラが整ってきますと、自宅に端末をひいて読影する専門医が増えてきます。自宅で好きな時間に子供をあやしながら読影診断ができる。そうなると、放射線科医の人気は相当高まるでしょう。
遠隔診断が広まり、病院から独立する人がどんどん増え、医療はこれからもっとダイナミックな動きになると思います。たとえば「的確、迅速、アクセスいい」、そういう画像診断センターが望まれます。
画像診断センターは米国でも年々増えています。全米ではすでに4,000件以上あり、同じ経営系列の施設が広域のネットワークを組み、的確で迅速なサービスを提供しています。ロチェスター大学でも15年ほど前に、大学病院から2キロ離れたところに開設されました。大学病院とは経営を別にして、入院設備はなく、収益を上げることを目的とした独立運営です。MRI3台、CT3台、スタッフは十数名。レジデントの教育やフェローシップもここで行うことができます。専門分野だけでなく、頭部も骨も腹部も読める、そういう医師を作っていく場でもあります。画像診断だけではなく、腹部や脳の血管内治療(IVR)や経皮的椎体形成術など放射線科医の活躍の場は益々大きくなっていくと思います。
これからはロビー活動により力をいれていきたいと考えています。日本人は勤勉ですし、医療レベルも世界的にみるといいところにいます。本来はもっといい医療を受けられるはずです。医療の質を上げるためには、政治家、国に対する積極的な働きかけが必要なのです。企業とコラボレートした働きかけも有効だと思います。
またエビデンスのある診療も目指したいことです。参照データベースを作成している病院も出てきていますが、全国ネットでティーチングファイルを作成し、全国から誰でもアクセスできるファイルを作成できればと思います。
さらに、放射線科の環境を向上させるためには、修練施設を充実させる他に教育者の指導スタンダードを統一する必要があると考えています。病棟や外来業務も含めた放射線科卒後教育をするのか、アメリカ式の一貫した放射線科卒後教育をするのかなど、教授や指導者によってばらばらな意見を統一していかなくてはなりません。
(2006年6月20日インタビュー)
〒104-8560 東京都中央区明石町9-1
TEL.03-3541-5151(代表)FAX.03-5550-2051
http://www.luke.or.jp/
| << 前の記事へ | 次の記事へ >> |